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第3章 船出

第5話 救世主

 

 8月某日 とある居酒屋。

 

それは数日前のこと。

 

松田と熊山お互いの近況など電話で話をしていた。

話は盛り上がり、部屋店の話題になったのである。

 

部屋店に入りたい

 

その言葉は、普通の会話の中から突然出てきた。

冗談交じりのようなものだったが、どこか本気のようにも聞こえる

 

一度は松田は笑って聞き流し別の話題になったが、

この電話の最中、熊山は何度も

 

部屋店に入りたいんです、仲間に入れてください

思いをぶつけてくる。

 

もし本気なら電話ではなく会って話をしようという事になった。

 

そして約束の当日。

 

二人は引き寄せられるように再会の日を迎えたのである。

 

最初のうちは、たわいもない話から、少し真剣な話まで、

いろいろな話を「つまみ」に、お酒が進んでいった。

 

しかし、なかなか本題にならない

 

電話では言えた話も、いざ顔を合わすと言えなくなるものだ。

 

二人のジョッキグラスが二つ、三つと空になっていく。

次第に声も大きくなり、顔が赤らんでいく。

二人は気持ちよく酔い始めていた。

 

そうして1時間ぐらいたった頃、ようやく部屋店の話題へと移っていった。

 

部屋店、すっごく楽しそうですね

熊山が羨ましそうに言う。

 

おお、楽しいね。大変だけど、楽しい

松田が笑いながら答え、そのまま言葉を続けた。

 

「本当に入りたいのか?」

 

熊山は即座に

入りたいです!入れてください

と大きな声で答えた。

 

その声は、今日一番の大きさだ。

 

わかったよ」と、松田の口から承諾の言葉が出たのある。

 

「ほんとうですか!?ありがとうございます!」

 

熊山はさらに大きな声をあげ、子供のように喜んだ

 

しかし、昔から熊山を知る松田にはひとつだけ心配事があった

 

熊山は営業マンでありながらやさしすぎる」のだ。

 

成果がでない時に厳しい言葉を言う事もあるだろう。

入社するという事は荒波に飛び込むようなもの。

本当に大丈夫だろうか。

そして出会うまで考えぬいて出た言葉がこれ。

 

熊山くんの宅建どうしても必要だから入社してくれ

 

宅建を持っているから入社。

 

入社後、この言葉に熊山幾度も窮地を救われた

 

松田のわかりにくいやさしさ」が垣間見れた一瞬だ。

 

こうして9目の救世主熊山部屋店入社決めたのである。

 

 

2012/02/20 17:42

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